MRの知識力アップ-肥満にどれだけ遺伝子が関係しているか

ここがポイント

肥満大国・アメリカには、ゆうに150キロはありそうなほどの見事なおなかをした人がたくさんいますが、それでも糖尿病ではない人が多いそうです。日本人はあそこまで太れませんし、そこまで太る前に糖尿病になってしまうことでしょう。それもこれも、「太りやすいのにもかかわらず、膵臓が弱い体質」を受け継いでしまったからなのです。だから、もし欧米人と一緒のペースで同じものを食べていたら、みんな糖尿病になってしまうかもしれません。やっぱり日本人は、自分たちの「食べすぎではいけない体質」をもっとちゃんと自覚したほうがいいのでしょう。

 

たくさん食べてもあまり太らない人もいれば、少ししか食べていないのにてきめんに太ってしまう人もいます。この違いが「遺伝」によるものと聞いたら、みなさんはショックでしょうか。

 

肥満にはさまざまな遺伝子が関係していることがわかっています。なかでも有名なのが「倹約遺伝子」と呼ばれる遺伝子で、β3-アドレナリン受容体という遺伝子の構造が異なっていて、これを持っていると、通常よりもエネルギーをため込みやすくなるとされています。

 

どうして倹約遺伝子を呼ばれているかというと、たとえわずかな食糧を摂取しただけでも、余剰エネルギーができたなら、それを脂肪に換えてため込もうとするためです。入ってくるものはわずかでもコツコツためていく倹約体質の体というわけです。この遺伝子を持っていれば、食糧が不足するような事態に見舞われても生き延びやすくなることでしょう。

 

しかし、おいしい食べ物が豊富に入る今の時代では、倹約遺伝子を受け継いでいる人は「そんなに食べてないのに太る」ということになってしまいます。飢餓の時代では大いに役に立った倹約体質が、現代においてはマイナスに働いてしまっているわけです。そして、私たち日本人の3人にひとりは、この倹約遺伝子を受け継いでいるとされているのです。

 

この遺伝子を持っていると、持っていない人に比べて約200キロカロリー分ほどの「太りやすいハンデ」を背負い込むことになるとされます。これは、ビールなら中ジョッキ1杯分、ごはんならおにぎり1個分に相当するエネルギー量です。「ハンデを背負っている人」は、もし「ハンデを背負っていない人」と同じスタートラインに立ちたいならば、いつも食べる量をこれくらい減らさないといけないことになります。

 

ところで、日本人をはじめ、アジアの人々の多くは、欧米人に比べると膵臓からインスリンを出す力が弱いと言われています。一説では、これには農耕民族だったか狩猟民族だったかが関係しているとも言われています。農耕民族が比較的安定して食糧を得られるのに対し、狩猟民族を祖先に持つ欧米系の人々は、たまに獲物が獲れたときにたらふく食べられるよう、大量のインスリンを出して一挙に多くのエネルギーを変換することのできる体質になっているというわけです。

 

それに比べると、日本人の体質は「一度にたくさん食べて、たくさんのエネルギーを変換する」のには、あまり向いていません。要するに、日本人には、少し食べただけでも太りやすく、しかも、膵臓の力があまり強くないタイプの人が多いのです。でも、膵臓の力がそんなに強くないのにもかかわらず、たくさん食べて太ってしまうと、いったいどうなることでしょう。

 

そうです。膵臓のインスリンを出す力がだんだん追いつかなくなって、ブドウ糖をエネルギーに換える力が衰え、いずれ糖尿病のリスクが高まっていってしまいます。このため、日本人には「小太り」程度の肥満でも糖尿病になってしまう人が少なくないのです。