MRの知識力アップ インスリン投与の工夫

ここがポイント

糖尿病に対する強化インスリン療法の一つに「インスリンの頻回注射療法」があります。この方法は、食前や就寝前にインスリンを注射することによって血糖値のコントロールを行います。但し、注射の頻度が非常に高いため、ほとんどの患者は自ら注射を行わなければならず、生活の質に大きな悪影響を与えています。

 

インスリンは体内での分解が非常に早く、しかも効果が出すぎると低血糖状態となります。極端に血糖値が低下するとエネルギー源として大量に糖分を消費する大脳に障害が現れ、最悪の場合は死に至ることもあります。

 

インスリンのように非常に薬物動態挙動の悪い薬を効果的に使う方法として、様々な徐放製剤が考えられています。その中で有名なのが「インスリングラルギン」です。糖尿病治療で使われているこの薬は製薬メーカーのサノフィによって開発され、日本でも2003年に商品名「ランタス」として使われ始めた薬です。

 

ランタスは、患者の皮膚の中にインスリンのタンクを作って、そこから徐々に血液中にインスリンを溶け出させることによって注射の回数を減らそうとするものです。インスリングラルギンの遺伝子組み換え技術を使って天然インスリンのアミノ酸を一部加工し、酸性で溶けるけれども中性以上では溶けないインスリン類似体としました。

 

酸性にして溶けている状態のインスリングラルギンを皮下に注射すると、皮下のpHは中性であることからインスリンが溶けることができなくなり、析出します。ただ、中性でもごくわずかに溶けるため、その溶けた分だけが血液中に流れ込み、薬の作用を発現するようになっています。

 

その結果、1度の注射で24時間以上にわたって血液中インスリン濃度が維持され、何度も注射を自分でしなければならない苦痛と、厳密に血糖値をコントロールしなければならない困難さから患者を解放することに成功しました。

 

インスリンは51個のアミノ酸がつながったペプチドと呼ばれるタンパク質でできた物質です。分子量は5807と巨大で、しかも水に溶けやすい性質がありますので、皮膚から吸収させることはできません。ランタスのようなインスリンのタンクをわざわざ注射によって体内に入れるのは、こうした理由があるからです。

 

もし薬がインスリンのようなものではなく、分子量が小さくて水と油の両方に溶けやすい性質を持っているような物質であれば、もっと簡単に薬のタンクを身体にくっつけることができます。それが皮膚に貼って使用する「経皮吸収型薬剤」というものです。経皮吸収型薬剤は、すでにさまざまな薬が開発されています。