製薬業界と地域包括ケアシステムの関わりについて

【製薬業界で話題の地域包括ケアシステム】

・最近、製薬業界や医療業界では「地域包括ケアシステム」が話題になっています。「地域包括ケアシステム」は、国(厚生労働省)の政策の一環として、今後の日本の高齢者社会を見据え、ますます普及していくと予想されています。地域包括ケアシステムの普及に伴い、製薬業界でも、地域包括ケアシステムと製薬業界の関わりについて、製薬会社としてどのように地域包括ケアシステムに携わっていくべきか、といった話し合いが現在、進められているところです。

 

では、この「地域包括ケアシステム」とは、どのようなシステムなのでしょうか。そもそも、なぜ国は、地域包括ケアシステムを進めようとしているのでしょうか。今回は、地域包括ケアシステムと製薬業界の関わりについて、ご紹介します。

 

【地域包括ケアシステムの概略】

地域包括ケアシステムとは、高齢者にとって、より良い暮らしをしてもらうためのシステムです。もちろん現在の高齢者だけでなく、今後、高齢者になる方々も対象としています。今後、日本は超高齢化社会を迎える、と言われています。日本が高齢化社会を迎えるにつれ、地域が一体となり、高齢者をサポートする必要が出てきます。高齢者へのサポートは、誰か一人が高齢者をサポートすれば、より良い暮らしができる、とは限りません。

 

一人だけサポートでは限界がありますので、地域が一体となり、包括的に高齢者をサポートしていく必要があります。ここで言う地域とは、病院や介護施設、自治体等のことです。国は、今後訪れる、超高齢化社会を見据え、高齢者のために、医療、介護、生活支援、介護予防が一体となり、高齢者が暮らしやすい体制を作ることで、高齢者が安心して在宅で最期を迎えられよう、包括的にケアしていくシステムを構築したいと考えています。これが地域包括ケアシステムの概略です。

 

【地域包括ケアシステムを進める目的①】

国が地域包括ケアシステムを進め目的の1つは、医療費抑制のためです。日本の医療費は、高齢化社会の促進と共に、年々急速な勢いで増加しています。今後、日本の医療費は減るどころか、増える一方であり、国は医療費抑制のために、現在、薬価の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及を進め、医療費抑制対策をしていますが、それでもまだまだ莫大な医療費がかかっている状況です。

 

2015年度の日本の医療費は、なんと41.5兆円であり、この41.5兆円という医療費は、過去最高額の医療費を記録しています。そして、国として、今後の高齢化社会や、ますます医療費がかかることを見据え、新たな策を練っていました。その政策の1つが、この地域包括ケアシステムです。地域包括ケアシステムでは、施設(病院等)から在宅(ご自宅)へ、医療や介護をシフトさせることで、医療費抑制できるのではないかと考えています。

 

もちろん施設から在宅へ医療や介護をシフトさせることで、高齢者の方々にとって、医療や介護をご自宅で受けることができ、通院や入院等の手間を省くことができ、QOL向上にも繋がります。ご自宅で、医師や看護師の方々が来て、診察や看護等受けることができるのなら、とても便利です。

 

そして、医療費抑制効果に関してですが、高齢者の方々が入院した場合、当然ですが、入院費がかかります。患者さんにとっても、病院にとっても費用がかかり、多くの方が入院した場合、医療費は膨れ上がります。しかし、ご自宅で医療を受けるとなれば、入院費はかからず、費用負担の軽減に繋がります。

 

現在の日本では、医療費における入院費の割合がかなり多く、医療費の約40%が入院費です。そのため、入院費削減のためにも、ご自宅等で、できるだけ医療を受けた方が医療費削減に繋がるのです。

 

【地域包括ケアシステムを進める目的②】

2つ目の目的は、高齢者が安心して暮らすことができる体制を作るためです。今まで、高齢者の方々は、病院や介護施設等への通院や入院、入所等をするケースが多い状況でした。しかし、今後は、高齢者の方々の通院や入院等をできるだけ減らし、高齢者の方々がご自宅で医療や介護を受けられる体制を作り、最後はご自宅で迎えたいと希望する高齢者やご家族のためにも、在宅を中心に医療や介護を受けられる体制を作ることが、地域包括ケアシステムの目的の1つです。

 

生活の中心を、施設(病院や介護施設)から在宅(ご自宅)へ、シフトさせ、高齢者がより良い暮らしを送ることができる生活システムを構築する、これが地域包括ケアシステムです。そのためには、地域が協力して、包括的に体制を作ることが不可欠です。国が目指す地域包括ケアシステム普及に向け、医療(病院等)や介護(介護施設等)、そして住んでいる自治体やボランティア団体等が、お互いに協力し、高齢者を支え合い、より快適な暮らしできるサポートをする必要があります。

 

【地域包括ケアシステムにおける製薬会社の役割】

・地域包括ケアシステムでは、地域(医療、介護、自治体等)が一体となり、包括的に高齢者のよりよい暮らしをサポートしていきますが、その中で、製薬会社としての、役割や存在価値が問われつつあります。製薬会社として、どのように、高齢者や医療をサポートしていくか、製薬会社として様々な取り組みが現在進んでいます。

 

製薬会社の取り組みの1つとして、地域包括ケアシステムでは欠かせない、多職種との連携や、病院と介護施設との連携といった、医療や介護の連携をサポートする取り組みが始まっています。多職種との連携とは、医師、薬剤師、看護師、ケアマネジャー、介護士等の方々がお互いに連携し合うことです。高齢者のご自宅には、往診、訪問看護や訪問介護等、在宅医療において、医師や薬剤師、看護師、ケアマネジャー、介護士、といった様々な医療従事者の方々が訪問するケースがあります。

 

したがって、そこでの連携は必須であり、お互い協力して、密に患者さん情報の共有をし、お互い相補的に、患者さんをサポートしていく必要があります。そこで、製薬会社として、現場のMRが多職種との連携サポートや、施設間での連携のサポートを強化することで、地域医療にも貢献でき、地域包括ケアシステムの普及にも繋がるのではないか、と考えられています。今までの製薬会社やMRの活動では、あまり見られなかった地域医療(多職種、施設間)の連携サポートが期待されているのです。

 

【地域包括ケアシステムにおけるMRの役割】

・MRは医薬情報担当者でもありますので、高齢者の服薬コンプライアンスや副作用情報の収集等、医師や薬剤師の方々と連携することで、いかに高齢者にとって、安心して継続して薬を服薬することができるか、といったサポートをすることもできます。そのような面でも、製薬会社やMRが、地域包括ケアシステムに貢献できる可能性があります。

 

現在、地域包括ケアシステムの関わりについて、製薬会社ごとに、具体的な指針を明確に発表しているわけではありません。しかし、今後、製薬業界やMRの活動内容は、地域包括ケアシステムの普及に伴い、大きく変わる可能性もあります。いかに製薬会社として、価値を提供できるのか、製薬会社と地域包括ケアシステムの関わりについて、今後の動向に注目です。