心筋梗塞にまつわる本当の話

 

ここがポイント

心筋梗塞にはじつにいろいろな症状の出方があるのです、安易なイメージに振り回されることなく、正しい知識を身につけて、怖い病気から身を守るようにしましょう。

 

突然、「ううっ」とうめき声を上げたかと思うと、左胸を押さえながら、その場にバタッと倒れ込む。映画やドラマでは、だいたいこんなふうに心臓病の発作シーンが描かれていますね。

 

こういうイメージが定着してしまっているせいか、心筋梗塞の症状を「左胸の激しい痛み」だけと思っている方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、それは間違いです。心筋梗塞は胸の痛みだけではなく、いろんなところに症状が出ることの多い疾患。しかも、胸の痛みを伴わないケースも決して少なくないのです。

 

もちろん、胸痛はいちばん多い症状ではあります。胸痛に加えて、息苦しさ、呼吸困難、吐き気、冷や汗、意識混濁といった症状が現れるのがもっとも典型的です。

ただ、同じ胸痛にしても、痛み方は人によってさまざま。激しい痛みであるとも限りません。

その訴え方にもいろいろなパターンがあり、「胸がしめつけられるような感じ」「言いようのない胸の気持ち悪さ」「何かが胸に乗っているような息苦しさ」といった表現をする人もいます。胃やみぞおちが痛いのだと勘違いする人も多く、「胃の不快感だとばかり思っていたら、心筋梗塞だった」という人もめずらしくありません。

 

また、意外な場所に症状が出ることもあります。

たとえば、背中、首、あご、奥歯、左肩、左腕などに違和感や痛みなどを訴えるケース。これは「放散痛」と呼ばれる現象で、病気の原因部位とはまったく違った場所に症状が現れるのです。「奥歯が痛くて歯医者さんに行ったけど、原因が分からない。それで念のために内科を訪ねてみたら、心筋梗塞の前ぶれだった」という例もあるといいます。

 

そして、忘れてならないのは、胸痛をはじめ、こうした症状が現れないこともあるということです。なかには、痛みや不快感をまったく訴えることなく、「たまたま心電図検査を受けてみたら、心筋梗塞になっていることが分かった」というケースもあります。

 

とくに、高齢者や糖尿病患者では、「胸痛を伴わない心筋梗塞」が多いとされています。胸痛の出ない心筋梗塞患者の数は一般に考えられているよりもずっと多く、「75歳以上の急性心筋梗塞の約50パーセントは、胸痛を伴わない」というレポートさえあるのです。

 

ですから「心筋梗塞=必ず胸の痛みに襲われる」と頭から決めつけてしまうのは、とても危険なことです。そういう典型的イメージに支配されていると、いざ「胸痛を伴わない心筋梗塞」や「他の部位に症状が狙われる心筋梗塞」になった場合に病気を見逃してしまうことになりかねません。